kowas
第三十六回
初出公開:1999/12/5、最終更新日:1999/12/5
おいしい食事が嫌いな人は、多分いないだろう。ただし、おいしいものだけでは満足できないのが、人間の欲張りなところだ。私の友人に焼きそばUFO大好き人間がいる。わたしに言わせれば、焼きそばUFOなどおいしくないどころか、体に悪そうですらある。あの「買ってはいけない」でも食べちゃ駄目と書いてたくらいだし。
ところが彼は、焼きそばUFOの為なら海原雄山とディベートしてもいいと言う。さらにタチがわるいのは、「あのオモチャみたいな味がいいんじゃないか」と、味の悪さを認めているところであろう。
実は私にもそういうところがあって、昔よく食べたデコレーションケーキが無性に食べたくなる時がある。あの、バタークリームが乗ったケーキだ。生クリーム全盛となった現代のケーキ界(あるのか?)では、姿を見かけることすら少なくなってしまったが、私のなかでは少なくともアイスクリームケーキより格上だ。友人達はそんな私のことを変態呼ばわりするが。私の反論は、「あの不味いのがいいんやないか」と、わけがわからない。
不味いもの食べたさは、どうも私の周囲だけの話ではないらしい。たまたま知り合った人間と、今回のような話をしていたら、実は僕もということになった。野尻湖の近くに大変有名な不味いラーメン屋があるらしくて、友人達とわざわざそのラーメン屋に向かったそうである。その味は、あまりの不味さに涙目になってしまうほどであったということをうれしそうに語ってくれた。
日本の飽食もいくところまで、いったということなのだろうか。アフリカの恵まれない子供に謝らないといけないのかも、と思ったりする。うそだけど。
第三十七回
初出公開:1999/12/11 最終更新日:1999/12/11
プロレスの重要な要素にギミック(キャラクター)がある。そしてその他にも、重要なキーワードがある。それは「アングル」という。
一流のプロレス団体は、年間130試合から150試合を行うが、レスラーの人数が限られているため、試合カードがマンネリに陥りがちだ。カードがマンネリ化し興行が面白くなくなるのは、プロレス団体にとっては死活問題なので、それをストーリーでカバーしようとする。日本人対外国人とか因縁の対決とか軍団抗争とかいうやつを思い浮かべて欲しい。対立構造を持ち込むことで観客が戦いにのめりこみやすくするのである。
このストーリーを「アングル」と呼ぶ。プロレス八百長論者の主張には、プロレスにはシナリオがあるとの言葉があるが、この「アングル」が基になっていると思われる。「アングル」の真の面白さは、レスラーは常にそれを守るわけではないというところにある。日ごろ積み重なった感情の爆発だとか、試合後の興奮だとか、ダメージによる酩酊などで、ストーリーが予定からしばしば逸脱する。上級プロレスファンはそこに楽しみを見出したりする。まあ、初級者は上っ面のストーリーだけでも十分楽しめるのだが。
アメリカでは、今プロレスの大ブームだ。かの地のプロレスは、プロレスに占めるアングルの重要度が日本に比べると非常に高い。ケーブルテレビをお持ちなら、WWFプロレスを見てみてほしい。よくできた物語に夢中になること請け合いである。日本人は真面目な民族なようで、勝ち負けを重視した楽しみ方をしがちだ。だが、最近はアングルを楽しめる下地ができたのか、興行のアメリカ化が進んでいる。
これによって、TVの連続ドラマが常に視聴者から新鮮で刺激的な物語を要求されるのと同様に、日本のプロレス団体も面白いアングルを次々に提供しなければならなくなった。大変なことに。さて、そこで私が考えたアングルを披露したい。苦しいプロレス団体の一助になるかもしれない。
ストーリーはこうだ。大会場での興行でメインイベント。善玉と悪役のトップレスラー同士のシングルマッチが行われている。そして、悪役レスラーが押されているとき、リングに一人の男が乱入する。男はきらびやかな和装で頭には烏帽子、手には軍配を携えている。その姿は国技大相撲の行司にほかならない。
行司はレフリーに襲いかかり、手にした軍配の柄で額を流血させると、勝手に試合のレフェリング権を奪い取る。レフリーが変わった瞬間に、悪役レスラーが反撃を開始。悪役はセコンドの反則介入なども使いながら、善玉レスラーをフォールの体勢に組み敷く。
そして、カウント。ワン・ツー、そこで善玉レスラーは肩をあげるが、行司レフリーは迷わずスリーカウントをうち、試合終了。立ち上がると勝者悪役レスラーの右手を上げる行司レフリー。ここで、善玉レスラーは大クレーム。観客は大ブーイングだ。ここで、行司レフリーがマイクを持つ。
「わたしは29代目木村庄之助だ。わたしが本物の判定の仕方を教えてやる。善玉レスラーは死に体だったから、カウントを続けた。これが、本当の相撲の判定だ」より大きくなったブーイングを受けて、善玉、悪役、両陣営のセコンドがリングに乱入、大乱闘になる。アングル提案は以上。プロレス関係者の皆様、連絡待ってます。
第三十八回
初出公開:1999/12/14 最終更新日:1999/12/14
味覚は年齢とともに変わるものだとはよく言われるが、自分もそれを実感する一人だ。例えば、私は肉好きであって、野菜などは、「草食動物にでも食わしてしまえ」と思っていた。
ところが、今ではお肉などはあまり魅力的ではなくなってしまった。とんだ変節者である。まあ、世間的にみれば一般的な話なんだろう。
最近は味覚も安定してきていて、さらに大きく好みが変わったということはないようだ。しかし、九州に引越してきてからというもの、自分の好きな飲み物に新しいメニューが加わった。焼酎である。
いままで、お酒といえば、ビール、バーボン、ジン、日本酒の人であった。焼酎は、酎ハイくらいしか飲まなかった。さらにいえば、学生の時に飲んだ「さつま白波」の臭さが強烈な記憶となって良い印象がなかったくらいであった。ところが、九州にくると焼酎なしにははじまらない。居酒屋にいくとキープできるのはほとんど焼酎。もちろんスナックでも焼酎がキープできる。
さて、ここで解説。焼酎にはその原料によっていろいろな種類がある。さきほどの「さつま白波」は芋焼酎。さつまいもが原料でメッカは鹿児島。そのほかには麦焼酎。「いいちこ」が有名。熊本では米焼酎。そして、これも米焼酎「泡盛」。これは沖縄。ちなみに沖縄の居酒屋では「泡盛」がキープできる。
このような解説を私も上司から受け、くさくない焼酎という麦焼酎をロックで頂くとこれがまたいける。先ほど、ジンを飲むと述べたが、まさにそんな感じ。ジンの薬臭い感じがぬけたような感じで非常によろしい。このパラダイム転換で、苦手だと思っていた芋焼酎にもチャレンジした。「さつま白波」はいまでも今ひとつの味と思うが、少し値がはる有名な芋焼酎「森伊蔵」を口にしたところ、これがもう最高。芋焼酎よ、いままで嫌っててすまんとばかりに酒瓶に頭を下げたのは云うまでもない。
沖縄では「泡盛」。特に「古酒」ともなるとこれも最高。ここで注意がある。泡盛はアルコール度数が高いので安物を飲んでしまうと悪酔いまっしぐらになる。お店の人に聞いて高価いのを頼んだほういいと思う。焼酎を飲む機会がなかった人は是非飲んでみてはいかがだろう?
第三十九回
初出公開:1999/12/21 最終更新日:1999/12/21
ネット経済での必須科目は英語だそうだ。インターネットの凄みはほとんど無限の選択肢にコミットできることにあると思うが、その選択肢=情報の多くは英語で提供されている。
今後、ネットなしにはなにも進まない時代の到来を考えると、もう英語は避けられそうにない。学生でもないのに、再び英語に苦しめられるとは厄介なことだ。英作文が必要となるという現実には特にめまいを感じる。ただその一方で、相対してのコミュニケーションにはあまり不安がないので、英語そのものを嫌いにならなくて済んでいるが。その理由には、オールフリーの海外旅行経験だとか、大阪で遭ったある経験が下地になっている。
ある日のこと私は大阪駅で英語を話さない外国人に尋ねられた。たどたどしい日本語で「新大阪ココ?」とホームを指差して言う。わたしは、新大阪行きの列車が発着するホームはここですか?という問いにすぐに気付き、「そうです」と案内することができた。
コミュニケーションなどこの程度で十分伝わるのだ。つまり私のたどたどしい英語ですら、十分つたわるはずだ。と、私はこの事件から、妙な自信を得ることとなった。
さて、英語マスターの近道は、国語の勉強からと教えられたものだ。文章の読解能力が高まれば、前後の状況からの類推能力も高まり、多少単語がわからなくても状況の把握ができるようになるかららしい。ただその類推も、育った文化の差が大きければ、有効には効かない。結局、英語圏の人々と真に理解しあうには、歴史とか聖書の勉強も必要なのだろう。まあ、他人と仲良くなるには、共通の話題をもつことが有効だということは、当たり前なのだけど。
大阪に住んでいた時、あるシューズのディスカウントストアに黒人の店員さんがいた。ある暑い日、彼が客引きのかたわら、カタコトの日本語でこう言っているのが聞こえた。「暑いネー。お皿乾いちゃうヨ」そして、しきりに頭をなでるのである。それを聞いた私は、驚くやら、笑うやら、「誰が教えたんだ」と訝るやら。そこまで、異文化に溶け込めたら素晴らしいよネ、ほんと。
追記:3年後、イギリス長期出張で死ぬほど苦労するとは思ってもみないころの話である。英語の日常会話とビジネス英語は全く別の世界だし、世間話ができるようになるのにも苦労があるものだ。
第四十回
初出公開:1999/12/24 最終更新日:1999/12/24
私: 久しぶり。
友: どうした?HP更新してる?
私: 最近ネタ切れで、苦しんでるんや。クリスマス関連でいいネタない?助けてよ。
友: そやな、プレゼントくれるサンタさんじゃなくて、プレゼントを奪っていくサンタさんの話はどうや?
私: そら、ただの泥棒やん。
友: ちゃうねん。赤い服着てるとばっかり思ってたら、実は返り血で服が赤く染まってるねん。
私: 強盗殺人犯かー!あかん、あかん、そんな殺伐としたのはあかん。もっとファンタジックなネタにしてくれ。
友: じゃあ、実はサンタさんには善のサンタさんと悪のサンタさんがいて、超過去から戦いを続けてるねん。ホワイトサンタとブラックサンタって言うんやけどな
私: 「幻魔大戦」みたいで、いい感じやな。それで?
友: 地球は今まで助かってたけど、ついにブラックサンタに地球の存在を知られて侵略が開始されようとするんや。そこに、ホワイトサンタ神のお告げで美女が戦いをはじめるねん。
私: いい感じや。
友: 美女は超過去にブラックサンタの大軍と戦い敗れ、心を閉ざしたサイボーグサンタ戦士をホワイトサンタ神に紹介されるねん。名前はベガや。
私: って、そのまんま「幻魔大戦」やん!盗作じゃないやつはないんか?
友: じゃあ、クリスマスにプロポーズしようとしていた青年が婚約指輪を買って家に置いておくんやけど、泥棒に入いられて指輪を盗まれてしまうねん。かわりの指輪を買うにも青年は貧乏で代わりの指輪を買うことができんねん。
私: おお、ラブロマンスやな。今度こそいい感じや。
友: その青年も必死に指輪を探すんやけど、見つからないままクリスマスイブを迎えてしまうねん。
私: 大変や、どうなるんや?
友: そこにサンタさんが現われて、白い大きな袋を下ろすと・・・
私: とられたはずの指輪をくれるんやな。
友: ちゃうちゃう。泥棒の死体や。かわりに復讐してくれたんや。
私: ・・・
友: サンタさん赤い服着てるとばっかり思ってたら、実は泥棒の返り血で服が赤く染まってるねん。
私: 指輪は?(低い声で)
友: さあ?
しばらく絶交したという。