与太話2000/9/9-2000/3/12

kowas


第六十一回

猿ゴルファー・プロ

初出公開:2000/9/9、最終更新日:2000/9/9

友: 一緒に漫画家を目指さへんか?

私: いきなりやな。 どんな漫画描くんや?

友: 「キン肉マン」に対抗して「イン肉マン」っていうのはどうや。

私: いきなりパロディーからか、っていうか題名がアングラ臭いな。

友: ”ゆでたまご”も二人で描いてるから、ターゲットにするにはちょうどいいやろ。

私: どうせ目標にするんやったら、藤子不二雄くらいにしたらどうや。

友: じゃあ「プロゴルファー猿」に対抗して、「猿ゴルファー・プロ」はどうや?

私: なんでいちいち対抗せんといかんかわからへんけど、ありきたりやな。

友: わかった!「プロゴルファー・るるる」ていうのはどうや。

私: それはちょっとおもろいけど、どんなプロゴルファーやねん?

友: わからん。

私: 結構、無責任やな。

友: もう、面倒やな。「プロサルファー・ゴル」でどうや!

私: なんのスポーツか分かれへん。

友: あかんわ、もうノーアイデアや、漫画家やめにするわ。


第六十二回

儲かってまっか?

初出公開:2000/11/27 最終更新日:2000/11/27

財務諸表をみる機会が多くなった。 大手企業ですらぱったり倒れることがあるくらいの不景気だから、 見るのは真剣であるが理解してるかどうかは別。

経理課の人間に言わせると、 一年一回作成された程度の貸借対照表(B/S)や、 損益計算書(P/L)を見たところで、 企業の倒産を見とおせるわけないとのこと。

しかも、日本の企業情報公開制度は後進だし、 会計ルールはまちまちだし、粉飾が横行しているしで、あてにならない。 しかし、他にものさしがないので、それをじっと読み取ろうとするしかない。

村上龍のメールマガジンのなかで「この国には会計がない」という感嘆があったが、 これは至言だとおもう。 しっかりした会計があれば、ある経済活動が成功であったのか失敗であったのかきっぱりわかってしまう。 そんな事実は、わが国にはそぐわないのであろう。

さて、「儲かっている」とはどういう状況を指すのであろうか?B/Sあるいは、P/Lベースで黒字であれば儲かっていると読んでいいのか?これは違うと思う。

あくまで営業利益がでているのかどうかを問うべきであろう。

その点、近頃提出が義務付けられた、キャッシュフロー計算書は、非常にわかりやすい

では、営業キャッシュフローが黒字なら「儲かっている」といってよいのだろうか。その黒字幅の多少に関わらず。これも違うと思う。

黒字=利益の量は、ある一定以上の額を越えないといけない。色々な指標も存在するが、その事業をすすめるにあたって投入された、資本の量に対して、ある一定のパーセンテージ以上の利益を生まないといけない。それは少なくとも、銀行預金、いや、あるリスキーなファンドを購入した時に得られるであろう利子を上回る利益を生まなければいけない。

それは、企業が生む付加価値とは[金利]のことを言っているということ。

企業とは、一種の金融商品なのだ。企業は利益を生み、出資者に利潤を還元しなければいけない。

利回りの悪いファンドは市場ではどう扱われるだろうか。やはり、排除されていくであろう。これは利益をだせない企業も同じことである。企業の存在意義は、儲かっているかどうかにある。(雇用などの社会的な意義はおいといて)

などと、ぼんやり考えながら、財務諸表をにらみつづける私であった。バカの考え休むに似たり、ではあるが。


第六十三回

車田節考 -「リングにかけろ2」に寄せて-

初出公開:2000/12/25 最終更新日:2000/12/25

あなたは、「ギャラクティカマグナム」を知っているかっ!

これは大人気ボクシングマンガ「リングにかけろ」に登場した必殺パンチの名前である。 そして、「リングにかけろ」は17年前、少年ジャンプに連載されたボクシング漫画である。

主人公、高嶺竜二とその姉、菊の姉弟はボクサーであった父を亡くす。 母親はその後、生活の為に再婚するが、この新しい父親というのがどうしようもない男。 働きもせず、昼から酒を飲み、家族に暴力を振るう。 この父親に耐えかねたふたりは、家出してしまう。 幼いふたりにとって世間の風は冷たい。それでも、やさしき人々との出会いやボクシングを通じて、薄幸な姉弟はたくましく成長していくのだった。

さて、スポーツマンガには主人公に敵対するライバルの存在が付き物だ。 ライバルの名は剣崎順という。彼は高嶺の同級生なのだが、全てが正反対。 大変なお金持ちの息子でボクシングも天才的なセンスを備えている。 彼がどれくらいお金持ちかというと、ボクシングの大会に出場すれば、私設チアガールの応援がつくほどである。

着々とボクシングの実力をつけた高嶺は、ライバル剣崎と激闘の末破れるが、この一戦で故障した剣崎の変わりに全国大会への切符を手に入れる。 そして全国大会出場へ向けた特訓を繰り返すうちに偶然、必殺パンチを身に付ける。 必殺パンチの正体は、パンチの命中の瞬間、手首を回転させるというコークスクリューパンチであった。 高嶺の姉はこのパンチに「ブーメラン・フック」と名付ける。

必殺パンチを引っさげて、全国大会に優勝した高嶺は、 世界大会出場権利をも手に入れる。 世界大会は5人の団体戦で争われる。 世界大会出場者には、全国大会ベスト4が選出され、あとのひとりは何故か故障から復活した剣崎順! 選出委員にたくさんお金をばら撒いたとしかいいようがない、突っ込みし放題の展開だ。 この頃からこの物語が、なにものかに変質していく。

世界大会に備えて必殺パンチを開発したチームメイトを尻目に普通のパンチで世界の強豪に対抗していく剣崎。 彼は準決勝を前に必殺パンチをついに完成させる。 高圧電流をスパーリングパートナーにしたあまりに過酷な特訓のために彼は試合に遅刻(おいおい)。 大将戦には、なんとか間にあう。

そして「ギャラクティカマグナム」を爆発させるのである。 このパンチをくらったドイツチームの大将はあわれ、 会場の窓を突き破り場外のアスファルトまで吹き飛ばされるのである。 こんな極端な描写をするのは、車田正美が最初で最後であろう。

リアリズムというやつはマンガの面白さと何の関係もないということに開眼したのであろう作者は、天馬にまたがったかのように物語空間の頂点へと駆け上がっていく。

その後の展開で、剣崎はもうひとつの必殺パンチを放つ。「ギャラクティカファントム」と名付けられたこのパンチは、ロシュの限界を超えて星がひしめく松本零二チックな宇宙空間によって演出される。パンチの威力を惑星直列で表現しようなんてことは、あの梶原一騎でも思いつけなかったであろう。

面白さとは、いかに読者をだますか、惹きつけるかにある。これは車田正美の成功と、この後の少年ジャンプの隆盛を作っていくのである。


第六十四回

ほのぼの

初出公開:2001/1/11 最終更新日:2001/1/11

消費者金融から、お金を借りることで人はほのぼのとした気持ちになれるものだろうか。

最近消費者金融企業「レイク」のCMが気に入っている。CMの内容を大雑把に説明するとこうだ。若い女性とデート中の男性が、デート予算以上のおねだりをされて「大ピンチ」となさけなくつぶやく。そのピンチを目撃した3人の外人女性があのチャーリーズエンジェルのようにさっそうと現われ

「レイクエンジェルにお任せよ」とばかりに「レイク」の人文字を作る。かなりバカバカしいんだけども「イ」のポジションを任せられた女性の難易度を見てると、なかなかやるやんと思ったりして可笑しい。

「レイク」の存在を思い出し、「サラ金で金借りりゃいいやん」と男性が気付いたところで歌が流れる。ほのぼのレイク♪

さて、新聞には4コママンガがつきものだ。私が注目する4コママンガには岩谷テンホーの「みこすり半げきじょう」と、いしいひさいちの「ののちゃん」がある。アナーキストいしいひさいちが新聞4コマしかも朝日新聞に連載しているのは驚きである(それも朝刊!)。そのいしいひさいちがやってくれた。

主人公、ののちゃんは小学生の女の子である。兄からお金を無心されたののちゃんは、レイクのCMのような人文字で「リソク」(利息)とやる。それを見たおかあさんが、ののちゃんを怒るのかと思いきや「800円渡して1000円貸したことにしなさい」と言う。

お金を借りるというのは、利息を支払うということなんだと喝破しているこのマンガは、たった4コマで借金の本質を説明している。どんなにCMが面白くても、高利貸しからお金を借りて、ほのぼのできるわけないのである。


第六十五回

100万人のメカドッグ

初出公開:2001/4/7 最終更新日:2001/4/7

不景気な世の中だと云われるようになって久しい。日本政府は公共事業を中心とした景気刺激策を重ねたが、どうも効果が見えない。この場合公共事業イコール土木建設事業という意味で述べた。政府が行う公共事業=土木建築事業が景気回復に効くのかどうかをいぶかる声は多い。

しかしこれが有効だと考えられてきたことは理解できる。景気が悪いというのは、単純に言えば需要が弱いということだ。では、無理やり需要を作りだせはそこから好循環がはじまるはずだ。何の需要を創るかはよくよく考えなければならないだろうが。

私見だが、土木建築系事業で箱モノを造るのはまだ良い、ところが将来、その運用とか維持などにもコストがかかっていくものだという認識が政府にあるのだろうか。これは税金の無駄遣いというやつではないのか。せめて将来の維持コストがかからない手離れのよい事業をしてもらいたいものだ。

では、話を変えて、有効な公共事業というものはあるのだろうか。需要創出をあくまで目的とするのなら、極端な話、穴を掘ってまた埋めるだけでも良いのだ。だが、意味のない作業をするよりは、意義がある事業のほうがよいのは当然だ。

音楽家、坂本龍一はホットワイアードのインタビューで、こう答えている。

「箱モノ」公共事業でお金を使うくらいなら、従来の公共事業で破壊した自然環境を取り戻すことにお金を使って欲しい。

彼はエコロジーに関して先鋭的な発言をよくするのだが、上記のような意見は一般的な感覚でも頷けるのではないか。だが、この提案の実現は難しいだろう。従来の日本のやり方を二重に否定することになるからである。ある意味掘った穴をまた埋める作業の話にも似ている。

そこで私も考えてみた。箱モノではなく、ずるずるとメンテナンスコストが掛かることもなく、かつ面白い公共事業はないものかと。

わたしは「雷波少年」というテレビ番組が好きなのだが、その中の企画に「雷波少年的ゴミ生活の旅」というのがある。お笑いコンビのメカドッグと一人の女性が日本全国を旅しながら、不法投棄のゴミの山を片付けていくというものだ。これなのである。本当に意味のある公共事業というのは。人が来ないリゾート施設とか必要性があるかどうか判らない干拓事業にお金を遣うくらいなら、可能な限りのお金でメカドッグ集団を結成し、NHKで活動を放送してはどうか。

雇用は生まれる。日本は綺麗になる。テレビ放映によって、家庭への分別ゴミ教育ができる。リサイクルの意識が進むかもしれない。ついでに今後のメンテナンスコスト(固定費としての)もかからない。

そして、表題の通り100万人ものメカドッグが現われたときそれはゴミひろいではなく、それは産業になるのである。静脈産業の誕生である。諫早湾の水門の建設コストは2000億だそうだ。それを考えれば、全く不可能な話ではないのだが。