与太話2002/2/24-2002/7/25

kowas


第七十一回

ミーティング

初出公開:2002/2/24 最終更新日:2002/2/24

「先期の反省点は、戦術が総花的かつ単発的で、戦力や資金を分散してしまったことにあると思います。今期は、ビジョンを明確にすることで、目標に対する絞込みを十分に行わなくてはなりません。その上で戦略を再設定し、戦術にも落とし込みを行っていかねばなりません」

「確かに、戦術が点にしかならなかった。点を線に、線を面に変えることを考えなくては」

「それが戦略です」

その時、ひとつの影がミーティングルームに姿をあらわした。

「首領」

会議室が低くざわめいた。首領が会議に出席することは滅多にないことだった。首領が口を開く。

「われわれが目的とするのは、あくまで世界征服であり、無差別テロをおこなうことではありません。むしろ、われわれは無差別テロを憎んでおります。」

すると、東京都民の壊滅を目指した、貯水池へ毒物をはなつ作戦は、首領の意図を汲み取ったものではないということになる。確かに首領のいうように、世界征服とテロ行為には、何の関連性もないのかもしれないと思えた。

「やはりわれわれのビジョンを再確認しましょう。われわれは世界征服を目標としておりますが、世界征服の定義を考え抜いてこなかったのではないでしょうか?」

首領が満足そうに頷き、そして言った。

「われわれの目指す世界征服は、世界に存在する国家の政体のほとんどを手に入れ、世界をコントロールする能力を奪取することにあります。そのためには手段を選ぶつもりはありません」

会議の後、結社は”世界をコントロールする能力を奪取する”というビジョンをもとに活動を開始した。具体的には、饗応、洗脳、誘拐、暗殺を駆使して有力政党を乗っ取り、”消費税の引き下げと政界浄化”を旗印に政権を奪取した。

現代文明の最先端以上の技術力と、それを支えることを可能にした資金力。さらには、強化人間を主戦力とした戦闘力すら有する彼ら結社のプロジェクト推進力は強力だった。結社は、この国での成功実績を土台に、その他各国へ同戦略を水平展開し成功を収めていった。皮肉にも世界征服と、世界平和は特に矛盾しなかった。世界は何も変わらない。


第七十二回

千と千尋の…

初出公開:2002/5/12 最終更新日:2002/5/12

A: 宮崎アニメがベルリン映画祭で金熊賞をとったな。

B: あいかわらず話が古いな。でも、ちょっとは驚いたわ。国際的には「となりの山田くん」で一度コケてるからな(スタジオジブリとして)。

A: ジブリはまだしも、いしいひさいちの世界進出には震撼したな。あのナベツネいじりが世界に行くのかと思うと。

B: 確かに。話を戻すけど、金熊賞は「魔女の宅急便」の世界宅配サービス開始以来の快挙やね。

A: 魔法のほうきで、海外配達は無理やろ。

B: コンテナ付きのほうきで・・・

A: (無視して)「千と千尋の神隠し」って、妖怪向け湯治場での物語やろ、日本人の文脈でしか理解できないような背景が評価されたことは驚きやし、多少の文化背景の違いなんてものは普通のレベルの想像力があれば、簡単に飛び越えられる溝なんやと思うと安心するな。

B: 外人さんがどこかで誤解をしている可能性はなきにあらずなんやろうけど、評価されたってことは一番大きな溝はジャンプしてくれたってことやろうしな。

A: 「千と千尋・・・」を見た感想が「ラピュタは本当にあったんだ」やったら嫌やな。

B: メチャメチャ日本通やん。必要以上に文化の溝を越えてるわな。

A: 宮崎駿アニメの題名って、「??の??」ってパターンが多いよな。

B: ああ、「名張の五ツ」とか。

A: 言ってることは間違ってないけど、狙ってるところが全然違う。

B: 「千と千尋のナウシカ」とかやな。

A: そうそう、普通の少女が王蟲の大群に突っ込んでいくわけや。

B: 「カリオストロの神隠し」とか。わけわからん。

A: カリオストロに盗みに入ったものは帰って来ませんという話やな。

B: 「千と千尋のせんだみつお」

A: わけわからんけど、数字的にはOKやな。「千と千尋の萬田久子」

B: なるほど。「千と千尋の萬田銀次郎」

A: 「ミナミの帝王」か。「きっちり耳そろえて返してもらいまひょかー!!!」

B: これが世界に認められたら、文化の溝も、あって無きがごとしなんやけどなー(大笑)

両名大笑いしつつフェードアウト。二人ともこの映画は見ていないという。


第七十三回

素朴な疑問

初出公開:2002/6/15 最終更新日:2002/6/22

自分が人の親になる可能性について思う。男なのか、女なのかとか。どんな名前がいいかとか。悪魔くんはまずいだろうとか。天使ちゃんは恥ずかしいだろとか。

かわいい子だといいなとか。素直に育つといいなとか。元気に育つといいなとか。ちゃんと食べさせてやれるのか俺はとか。かわいい子には旅をさせろとか(思わない)。

自分にはひとつの決意がある。それは、子供の素朴な疑問をしっかり受けとめられるような親になりたいということだ。かつてこんなことがあった。とある川辺で、鉄は水に沈むのに、鉄でできた船はなぜ水に沈まないのかと子供が親に聞いたのである。その親はその質問に何も言わず、無視によって応えたのだった。

このことは自分の中で、非常に後味の悪い記憶として残ったのである。こういうのが積み重なって子供が非行に走る原因になったらどうするというのか。(妄想)

そして上記で述べた決意が自分の中で生まれたのである。まず私は、鉄の船の件についての答えを用意した。その他、子供が発するであろう程度の科学的疑問については、自分の知識ととんちでなんとかなるであろうという自信もある。

なぜ海は青いの?そらの青が映ったからだよ。

問題は、哲学的な問いである。

なぜウソをついてはだめなのかとか。なぜ勉強をしなくてはいけないかとか。なぜ悪いことをしてはいけないかとか。世界に平和な日がくるのかとか(テレビ番組に毒されたケース)。人はどこからきてどこに行くのとか(聞かれない)。

実は、上から三っつまでは答えを用意した。人生を生きる上で、損しないためというものだ。

ちなみに損得勘定系のお答えは、妻にすごく不評であることを付け加えておく。

問題は、彼(彼女)が自分が生まれてきた意味はなにかとかその類の質問をぶつけてきた時でである。ここまで来ると、結局、自分にもわからないことだけに答えようがない。素直にわからないというしかないのかも知れない。

しょうもなくてすまん。


第七十四回

家事をする

初出公開:2002/6/22 最終更新日:2002/6/22

私は家事をすることがある。男性からは軟弱だとののしられ、女性からはやって当然と非難されそうな男性の家事についてが今日のテーマである。

家事は、食事関連、洗濯関連、掃除、買い物に分類できると思う。子供ができると子供の世話が続く。その内、わたしが出来ることには洗濯関連、掃除、買い物がある。食事関連は、なかなか難しくて、食器洗いとその片付けはできるものの、食事の用意はできない。一応料理もするのだが、自分が食べる料理と人に食べさせる料理は全く別だと思う。私が人に食べさせられる料理のレパートリーは片手で数えられる程度でしかない。

さて、世の中には全く家事をしない男性もいる。そのような方を非難するのが今回のテーマではない。できない理由も様々であろうし、しない理由も様々だろう。ただ、私がひとつ指摘するとすれば、男性が家事をやらないのは、やり方がわからないということが大きな理由になっているのではないかということだ。

例えば、食事関連について云えば、私は、魚をさばき方をしらない。みりんの使いこなし方もしらないし、上手な包丁の使いかたをしらない。卵をうまくわれない友人もいたし、焼肉屋にいって、その肉が焼けているかどうかわからない人もいる。

わたしは洗濯機をまわせるが、できない人がいるらしい。洗剤の正しい投入量がわからないそうだ。洗濯物の干し方もテクニックがあるといえばあり、それを知らない人が洗濯物を干すのは面倒だろう。

一人暮らしをしたことがない男性が家事をしない(できない)人になりやすいのではないかと思う。理由はやったことがないからである。これは女性も同じ条件が当てはまるであろう。

ながながと書いてきて、なにが云いたいかというと、旦那さんに家事を手伝ってほしい奥様方は、家事のただしいやり方あるいはコツというやつをコーチすればどうかということである。やり方さえわかれば、家事は面倒ではあれ苦痛ではなくなるものだ。


第七十五回

怪人列伝

初出公開:2002/7/25 最終更新日:2002/7/25

A: 「超人バロムワン」っていうヒーロー番組を覚えてる?

B: タケシ少年とケンタロウ少年が"バロムクロス"と叫びながら二の腕を交差させるとバロムワンに変身するんやんな。話の中身はおぼえてないけど。

A: そうそう。友達ふたりで力をあわせて頑張ろうってやつなんや。スポーツ万能のタケシ少年が体力面を受け持ち、秀才少年のケンタロウ少年が頭脳面をうけもつって設定なんやけど、こどもが力合わせても所詮は子供やからなぁ。

B: まあ、子供番組なんやし。

A: バロムワンは自動車も持ってるんやけど、ふたりの年齢を足したら18歳越えるんやから、自動車くらい運転して良しってことなんかな。

B: バロムワンは、免許もってないやろ。

A: 考えたら、到底陸運局の検査を通りそうにない車やったから、空き地ばっかり走ってたわ。だから運転免許もいらんのかもしれん。

B: プロペラ付いてたからなぁ。

A: 文句ばっかり言っているけど、バロムワンにも功績あるわけよ。トラウマ級の気色悪い怪人をたくさん輩出して人々の記憶に残るんや。

B: ほお。どんなやつがおったっけ。

A: 基本知識として、こいつらはドルゲ怪人って呼ばれていて、怪人にはすべからくナントカドルゲって名前がついてるわけ。

B: ゾルゲ事件と関係あるんか?(笑)

A: インスピレーションはもらったかも知れんな。それで、記憶に残ってる怪人が、ヤゴゲルゲ。

B: ヤゴってトンボの幼虫のヤゴ?なんで、わざわざ幼虫やねん。ああ、変態してトンボの怪人になるとか?

A: なれへん。しかも、得意技が子守唄やねん(笑)

B: 成虫になってへんのに子守唄か(笑)

A: ほかにも変なやつがたくさんおってさ。ネーミングであんまり悩まんでいいぶん、肝心のキャラクター設定に力を入れればええのに、だんだんええかげんになっていくねん。

B: 考えんの面倒臭くなったんかな。

A: でもそれが名怪人を生み出す原動力になったからなぁ。クチビルゲってやつがおって、唇に足が生えてるねん。

B: 得意技は噛み付きか?

A: そう(笑)。こいつが結構気色悪いデザインで唇の周りに毛が生えてるという・・・

B: ちょっといややな。

A: 姉妹怪人にノウゲルゲってやつがおって・・・

B: 脳みそに足が生えてんのか?

A: そう(笑)。ほかにはウデゲルゲってやつがおって、あんまり名は体を表してないけど、手に足が生えてんの。

B: だんだんネタ臭くなってきた。

A: そんで中指の先に一つ目がついてんの。

B: 相当バランスが悪いデザインやけどどうやってたたかうの?

A: 握りつぶし(笑)。それで、泣き声が”フィンガー・フィンガー”やねん。

B: ひでえなー(笑)

A: それで、原作が"さいとうたかを"やねん。

B: 「ゴルゴ13」か、それはウソやろー。

続かない