与太話 2002/08/26-2002/11/14

kowas


第七十六回

推理物

初出公開:2002/08/26 最終更新日:2002/08/26

世界一短い推理小説という小話がある。

探偵「犯人はおまえだ」
犯人「ばれたか」

また、これを受けた世界一短いSF推理小説という小話がある。

超能力探偵「犯人はおまえだ」

ただし、SF推理小説の方は、犯人が自白にいたっていないため、探偵が偽者だったり、うそをついていたり、たまたま体調が悪くて超能力がうまく働いてなかったりすると冤罪の温床となる。十分な注意が必要であろう。

そう言えば、超能力追跡番組を見ていると、超能力が100%の確率で発現しないと、超能力者はウソツキのレッテルを貼られる。考えようによっては、なかなか理不尽な話だ。野球では、天才と呼ばれるイチローですら、打率4割を打てないのに超能力者は10割を求められるのである。かなり不公平だ。

しかし。

超能力探偵「犯人はおまえだ」
容疑者  「俺じゃねえよ」
刑事   「探偵さんの正答率は4割を超えるんだ、とっとと来い」

と容疑者が連れていかれる光景は、かなり危険な社会と見えなくも無いが。

刑事ジャガーという推理紙芝居があった。視聴者参加型番組で、事件編と解決編の間に少し間隔があり、視聴者は推理ごっこを楽しめるようになっている。そのなかでひとつだけ覚えているエピソードがある。

殺人事件があり、容疑者が三人連れてこられる。容疑者たちはそれぞれアリバイを主張する。

A.わたしは、森を散歩していたよ。たくさんのリスをみかけたよ。
B.ぼくは、海岸を散歩していました。魚が海岸に打ち上げらて死んでたよ。目を瞑っていたし。
C.ぼくは、草原を散歩していたよ。野生の鹿がいたよ。耳をくるくるとまわす様子はかわいかったな。

今思えば、アリバイにもなにもなっていないが、まあ、ここは我慢する。で、解決編。

刑事ジャガー「はっはっはっ、犯人はおまえだ、Bくん。魚にはまぶたがないから、目を瞑れないのだ」

違う、ちがうよジャガー。きみのは推理じゃなくて、ただの揚げ足取りだよ。 と思う、かわいげのない5歳の私であった。


第七十七回

スポ平

初出公開:2002/9/21 最終更新日:2002/9/21

A: 民主党の代表選挙は、管氏が有力なようやね。

B: 鳩山氏はどうも押し出しが弱いからなぁ。どうせ同じ主張をするんやったら、押し出しの強そうな人のほうがいいわな。

A: 一時は民主党に自民のオポジションになってくれることを期待したけど、あかんねぇ。大橋巨泉にはやられるし。

B: やっぱり、数合わせに一生懸命になりすぎて、主張の焦点がボケたイメージがあるからやろ。

A: 本宮ひろ志の新連載の政治マンガ「悪党」みたいに、主張が理解できなくもないけど極端や、ってほうがわかりやすいし、投票もしやすいかもしれんな。

B: 日本の公用語を英語にします、ってのはすごいよな。( 政党名「悪党」が結党するときにテレビ放送し、このように主張する)

A: もっぺん、野党を解体して、わかりやすい党を作ってくれんかな。例えば、始めにどの主張でいくか決めてから、議員さんを募るとわかりやすいかも。

B: 極端な話やけど、どうせ多数決をやるんやから、そういうのもありかもな。

A: で、アントニオ猪木と江本孟紀を比例区で擁立。

B: だからなんでそこでスポーツ平和党になるねん。

A: スポ平っていう略称をなんとか残せんかなと思って。

B: なんとか平という呼び名は斬新やな確かに。自民、民主、公明、スポ平。なかなかいい響きやね。

A: スポ平犯科帳。

B: その駄じゃれで池波正太郎先生が草葉の陰で泣くな。

A: 剣の達人にして火付盗賊改方のスポ平が、部下の大波くらっ太や大麻ラリ太とともに江戸の闇を斬るんや。

B: 大波くらっ太は「アイアンバージン・ジュン」、大麻ラリ太は「地獄戦士魔王」。変な名前の人しか参加できんのか?

A: おーとーこだったーらー

B: それは銭形平次。

A: そういや、スポ平のオポジションにUFO党ってのがあったな。まだあるんか?

B: 開星論(意味不明)のUFO党やな。しかしオポジションっておまえ。

A: スポーツ平和党は、アントニオ猪木がイラクでプロレスやって日本人人質を開放したという大実績があるけど、実はUFO党も負けてないねん。

B: うそっ。

A: UFO党結党とロズウェル事件が、UFO年表で同列に扱われてるねん。

B: だから、UFO年表ってどこ発行やねん。

A: あのロズウェル事件と同列やねんで!ちなみにピンクレディーの「UFO」大ヒットも同列。

B: わかったわかった。復活スポ平に話をもどして、スポ平の目的は何なの。

A: スポーツ活動を通じての世界平和を目標にしてるんやけど、プロレスはスポーツちゃうやろ。

B: いきなり、自己否定すんな。

A: アントニオ猪木を総理大臣にして、国会で「いちにのさんダー」をやる。その上、アメリカが戦争しかけそうな国にどんどん先回りして平和の祭典という名のプロレス大会を開く。

B: 話の腰をおもっきり折られて、アメリカは真剣に嫌がりそうやけど、戦争嫌いな国に案外支持されるかも知れんな。

A: ODAはできませんけど、プロレス大会は出前しますって、世界をまたにかけてプロレスやる。

B: ODA予算の節約にもなるな。でも、それは総理大臣じゃなくて、外務大臣の仕事ちゃうか?

A: なるほど、それで決まり。外務大臣、アントニオ猪木。

B: 外務官僚がまた仕事を拒否しそう。

A: それで総理大臣、江本孟紀。数々の舌禍を引き起こした上で官僚がアホやから政治できへん解散をする。

B: 政治は難しいのう。


第七十八回

怒りのアフガン

初出公開:2002/10/18 最終更新日:2002/10/18

アルカイダがガンダーラ石仏を破壊した時、「どうするんや」と思ったものだ。

それは、世界遺産を破壊してしまった彼らへの怒りではなく、貴重な観光資源を破壊してしまった彼らへの驚きの気持ちであった。

資源も産業もない国が外貨を獲得する手段はそう多くはあるまい。飢えた蛇が自分の尻尾を食っている。そんな光景が頭に浮かんだ。アルカイダは、どのように国民を喰わせていくつもりだったのか、わたしにはわからない。

戦争状態をとりあえず脱したアフガニスタンには、日本の援助が行われていくだろうけど、日本政府は、彼らに現金を決して渡さないでほしい。われわれの税金を武器を買うために使って欲しくないからだ。

このアフガニスタンの戦争の根源には、彼らの貧しさがある。そして、貧しさの理由は、彼らが情報を持っていないためだと思う。ここで述べる情報とは、学校教育から世界情勢までの広い意味を定義している。彼らは、自分たちが何故貧しいままなのかの情報(理由)すらもっていまい。

仮にだれかが、その理由に気がついたところで、その情報を共有することすらできないのである。字が読めないゆえに。日本は飛びぬけて識字率が高い国だから、他国の事情は理解しがたいだろうが、字が読めないというのは生きる為の情報を得る上で致命的な弱点といえる。

ジャレット・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」では、文字を持たない民族が文字を持つ民族に蹂躙される様が描かれるが、これは情報を持たない民族の弱さを悲しいまでに示している。

今後日本の援助が、この基本課題を解決するものでなければ行う意味がないだろう。これが解決しないなら、簡単に戦争状態に戻ってしまうと思うからだ。

自爆テロは、現実に絶望した人間の断末魔以外のなにものでもない。神風特攻隊がそうであったように。

日本にできる最良の援助は、彼らに教育(情報)を与えてやることではないかと思う。

戦争によって孤児となった子供を日本にひきとり、平和のなかで教育をあたえるのである。これは日本人を作る教育ではなく、未来のアフガニスタン人を創るのための教育が望ましい。ついでに日本語も覚えてもらえばいい。そして、日本はこのことでアフガニスタンの文化を学ぶのだ。

彼らが学校を修了し、教師としてアフガニスタンに帰るとき、初めてアフガニスタンに平和が芽吹くのではないかと思うのである。


第七十九回

ロボ=特殊車両説

初出公開:2002/11/9 最終更新日:2002/11/9

何故、子供は乗り物に興味をもつのだろう。 さらに言えば、特殊車両に異様に興味を示す。 戦車や、装甲車が好きな大人は、子供のころの延長としてこれらの兵器に興味をもつのであろうか。 確かに戦車や装甲車は、特殊車両の一種に違いない。

子供の頃、「ゲッターロボ」というテレビ番組があって、ひどく夢中になった。 「ゲッターロボ」は三機の戦闘機が合体することによってロボット兵器となり、悪の恐竜帝国と戦いを繰り広げるという物語である。 因みにゲッターというネーミングは、サッカーから取ったものとのことで、ポイントゲッターのゲッターだそうである。 恐竜帝国のボスの名前は帝王ゴールである。なるほど。

なぜあそこまで夢中になれたのだろう。当時の小学生男子にとっては、劇中にロボが出てくる時点ですでに魅力的だったのだが、ゲッターロボが画期的だったのは、合体、変形のフィーチャーを持っていたことである。また、三機の戦闘機は、合体の順番を変えることによって、三種類のロボになることが出来た。またも画期的なことに、二号機ロボは右手にドリルを備えているというサービスぶり。これにはしびれたものだ。ドリルやパラボラはなぜか小学生男子をしびれさせる力がある。

よくよく考えてみると、ロボへの興味の持ち方は特殊車両への興味の持ち方に似ているような気がする。特殊車両は、その名が示すようにある特別な環境に適応するように設計がされている。言ってみれば、車両界の異形である。彼らはその使命ゆえに一般の車両とことなる特殊な進化をしてきた。独自の進化によるおかしな姿は、子供の心を捉える。その典型こそがドリルであり、パラボラである。このデバイスは異様さで群を抜いているからこそ、子供の心を掴んではなさない。

子供は、その存在が異形であれば異形であるほど興味を募らせるのだ。 兵器やロボにいまだに心引かれる「大きいお友達」は子供から卒業できていないということなのだろう。 でも、その興味が日本の二足歩行ロボットの技術を進化させたのには疑いがなく、 男はいつまでたっても子供なのさ。 などと、肯定してよい類のエクスキューズなんだろうね。


第八十回

あとだしジャンケンのくせに

初出公開:2002/11/14 最終更新日:2002/11/14

前田日明が、パンクラスの船木や鈴木に対して"あとだしジャンケンのくせに"と言うのを、うまい言い回しするなと思っていた。

格闘家前田(現在引退)は、プロレスが市民権を得られないのは、 プロレス特有のうさんくささに原因がある考え、 プロレスのスポーツ化に尽力した。 現在人気のPRIDEなどは、明らかに前田という先達がいたからこそ成功できたと言ってもよい。

前田が第2次UWFという団体で一時代を作った後、 後輩である船木、鈴木は前田を猛烈に批判して新団体パンクラスをつくった。 理想の地に至るまでのやむを得ない妥協の連続を指して、時代が進んだ後に生まれた常識を武器にあれは間違ってたと否定されるのは、 前田にとって裏切りでしかなかったろう。

このことに限らず、歴史でも映画でも仕事でもなんでもそうなんだけど、 何かを成し遂げるときに発生するもろもろの妥協を経た上にやっと完成した産物を、 結果だけを見た第三者に無残に評価されることは良くあることだ。 とは言っても、モノもよくわかっていないような部外者に見当違いの評価を受けると腹が立ってしかたないのもよくわかる。 でも、そこをグッとこらえるのが大人なんだし、 これが理解できるからこそ、このような苦闘を乗り越えてきた他人の生産物や好結果に対して心から賞賛できるのである。

話ははじめにもどるが、前田は批判されても聞き流しておくべきだった。あの時の葛藤は非常によく想像できるけども、結局、若者の武器は新しい常識という"あとだしジャンケン"しかないんだから。

という、私のこの文章も"あとだしジャンケン"やね。