与太話2002/11/24-2003/4/21

kowas


第八十一回

名言備忘録

初出公開:2002/11/24 最終更新日:2002/11/24

1.美文すぎる  司馬遼太郎「坂の上の雲」
日露戦争、日本海海戦にて、日本の命運を担う連合艦隊第一艦隊参謀、秋山真之は、ロシアバルチック艦隊発見の報を受けて、 日本に打電。
「敵艦見ゆとの警報に接し、連合艦隊はただちに出動これを撃滅せんとす。本日天気晴朗なれど波高し」
これを見た海軍大臣山本権兵衛、「美文すぎる」と激怒したという。文章がヘタとか、ふざけた電報に対しての怒りではなく、「美文すぎる」である。いかに必死の戦いであったかが伝わるエピソードだが、司馬遼太郎のフィクションなのかも。

2.暗黒拳法爆雷拳で地獄送りだ  池上遼一「男大空」
字面が凄すぎて笑えてしまう。暗黒拳法という命名もアナクロだが、地獄送りだっていう威嚇も死語である。

3.俺の名は死神警察署長…………死神!     なにっ!  永井豪「バイオレンス・ジャック」
巨大地震後の孤立した廃墟の町では警察が山賊化してしまっていたというストーリー。ジャックと、警察署長の激突の場面。クライマックスに至ってこのセリフ。"ひねりなしかい"と心の中で突っ込んだ。ジャックの大仰な驚きの声も笑える。

4.それはそれ!これはこれ!!  島本和彦「逆境ナイン」
野球のマンガ。主人公が所属する野球部のマネージャーは、対戦相手に善意から弁当の差入れを行うが、彼らは食中毒をおこしてしまう。それを知った主人公は全力で戦えない。がんじがらめに縛られて、落ち込んでいる主人公に野球部顧問サカキバラ・ゴウが一喝。 「それはそれ!これはこれ!!」いいわけっぽい言葉が、前向きな言葉に見事に変化している。

熱い言葉を語らせたら右に出るものはいないという島本和彦のインタビューを引用する。平凡な言葉が魂の入れ具合でどう変化するかを語っている。
「布団が吹っ飛んだ」というギャグがあるじゃないですか。それは、オヤジギャグというか、面白くないギャグのひとつとして言ってるじゃないですか。それは、あなたがそれを面白いギャグと思ってないからつまらないんだよ、と。すごく高い高級羽毛布団をダイナマイト10本で吹っ飛んだところを想像しながら言ってみろと。その「布団が吹っ飛んだ」と、風が吹いてきて単に布団がぱさってなった時の「布団が吹っ飛んだ」では違うだろう!
5.わかってはいるが、わかるわけにはいかんのだ!  島本和彦「無謀キャプテン」
なかなか含蓄がある。自分にもそんなときがある。


第八十二回

新製品レポート

初出公開:2002/5/12 最終更新日:2002/5/12

「栗むいちゃいました」という商品がある。むいた栗を袋詰めしただけという単純な商品だが、結構なヒットになっているそうだ。 私は、露天の天津甘栗屋台から甘い匂いが漂ってくると栗が食べたくてたまらなくなることがある。が、それが購入につながらないのは、 皮を剥くのが面倒だからに他ならない。また、戸外で栗など剥いておれるはずもない。その売れない理由のハードルをことごとく乗り越え たこの商品は、見事ヒット商品となった。私もよく買う商品のひとつだ。

いままで、このような商品が現れなかった理由は、以下のような事情であったろう。さまざまな形で大きさも一定しない栗を 剥く機械の開発が難しいことは想像できるし、かと言って人間が剥いていたのでは、とんでもないコストアップになってしまう 。

「栗むいちゃいました」を完成するためのブレークスルーは、みかんの缶詰のように化学的な技術の進歩によるものだろうか、 はたまた、種無しぶどうのように品種改良の努力が実を結んだことによるものだろうか。

その答えは実にくだらない。人件費が異常に安い中国人の人海戦術で剥いているだけなのである。初めてこの事実を知った私は爆笑したものだ。 このような軽いめまいを感じさせる製品は他にも存在する。 「骨無し秋刀魚」これも毛抜きを装備した中国人が骨を抜きまくることによって生まれたサイボーグ食材である。

上記のような力業食材に来年、種無しスイカが追加されるという。これは4分の1に切られた形で提供される。思い起こせば 品種改良によって種の生成が止まった黄色い果肉の種無しスイカは既に存在していたが、多分にして味を犠牲にしていたようだ。だが、この新製品 は従来の赤い色のまま、味もそのまま。いままでとの違いはタネが抜かれているかどうかだけだという。

写真によると、はじめからタネがないスイカというわけではなく、なんらかの手法によってタネが抜かれたらしいとわかる。 それは、タネが格納されていたと思しき痕が確認できるからである。ここまでは従来の人海戦術によってタネが取られたのではないかとの 想像が可能だが、この4分の1をさらに包丁によって分割すると、驚くべきことにそのなかのタネも見事にないのだという。これらはまた、 われわれが知らないだけの単純な技術によるものなのか、それとも科学的な技術によるものなのか全く不明で、関係者を驚かせているという。

以上のような話を友人から聞いた私は、さらに問い詰めた。それによると、中国の能力開発省という組織がからんでいるとのこと。 そして、日本の商社がその組織の人間をアレンジして完成した技術らしい。これらスイカの輸入開始によって、日本のスイカ農家は壊滅的な 打撃をこうむるだろうというのが、友人の意見であった。確かに私のようなスイカ好きでなおかつ面倒臭がりな人間にとってはたまらない商品だろう。 まさか、能力開発省とは超能力の開発に関係する役所?

私は友人に言った。

「この話、おまえがつくったやろ」

ネタだったという。

監修 : スカーレット様 ; 「お茶しましょ!」


第八十三回

ロックは死んだ

初出公開:2003/2/28 最終更新日:2003/2/28

反体制の音楽、ロックの定義とは、イドの奥底から響いてくるような心の叫びを音楽にしたもの。それが私の主観である。

私は、ロックファンというものではなくて、その曲がロックがどうか気にしたことがないようなノンポリである。そのわたしに音楽はセミプロ級のある知人が話してくれた。

「東欧のロックが凄い」

実際に、それを聞かせてもらうと、演奏が少し稚拙な感じで特にどうということはない。強いて言えば、ボーカルに迫力があってよい、くらいの感想であった。

私は、いいにくいながらも、どこが凄いかよくわからないと尋ねた。すると、「歌詞が凄い」という。そういわれても自分の全く知らない言語でがなられているわけだから、さっぱりわからない。

また、歌詞が凄いと言っても、この自由な世の中、反体制、反社会を歌う歌詞はありふれていて、従来のロックで歌われていたものの焼き直しでしかありえないのではないか。そんな疑問があった。

それで、何ていってるんですか?

「なんで夜、外にいっちゃいけないんだーとか、歌ってるんだよ。爆笑だろう?」

そう、夜間外出禁止令及び、集会禁止令、戒厳令を罵る歌詞であった。まさに命がけの震えるような叫びを含んだ歌詞である。確かにこれはロックでしかありえない。

日本の常識の下では、冗談にしかなりえない言葉が、ある世界では生への渇望の言葉になりえる。だとすれば、平和の下でロックは成立しないのかも。


第八十四回

WHO AM I ?

初出公開:2003/4/16 最終更新日:2003/4/16

現在イスラエルに居住するユダヤ人のほとんどは、かつてパレスチナに住んでいた人種と異なるのではないか、という議論がある。旧約聖書よると、ユダヤ人はアブラハム、イサク、ヤコブの子孫のことらしい。当時のパレスチナで生活していたと思われるのは、アラブ人の先祖であり、モンゴロイド(類黄色人種群)として分類されるセム人である。ところが、われわれが想像する多くのユダヤ人の容貌は、コーカソイド(類白色人種群)である。人種群による分類方法は古くて乱暴な方法だと思うので、最初の議論を単純に肯定するのは危険である。とはいえ、否定しきるのも難しい。アラブ人とユダヤ人の見かけは、同じ人種とはとても思えないからである。

イスラエルには帰還法という世界で類がない法律が存在する。ここで定義されたユダヤ人は「ユダヤ人の母親から生まれた者、あるいは、ユダヤ教に改宗した者」である。ここで導かれるのはユダヤ人という「人種」は存在しないという結論である。つまり彼らは人種でなく民族(帰属意識を共有する集団)として分類されるべきであるということだ。だとすれば、旧約聖書で約束の地に帰還することを許された「ユダヤ人(種)」は、いつのまにか「ユダヤ民族」へとすりかわったということになる。まあ、穿った見方なので、信じないように。

話を変える。では日本人とは何者なのだろうか。ちなみに日本人も人種で分類することはできない。私の定義では、日本固有の生活様式に帰属し、似通った文化背景を持つ人々の集団が日本人だとなる。

さて、ここにイギリスで育った日系人がいる。かれは英語を話し、イギリス人の思考法、習慣、そして礼節を持ち、歴史観はイギリス中心で、子供のとき見たテレビ番組もイギリスのものである。最後に、彼は日本のパスポートを持っている。彼は何人なのだろうか。私の認識では、彼はイギリス人である。

日本人には国際人という言葉に憧憬がある。国際人とはどんな背景を持った人間なのだろうか。世の中には、両親の転勤により、子供のころから世界を転々とする人達がいる。日本人としてのアイデンティティを確立した後の両親はよい。しかし、その子弟はこの状況のなかで、どのようなアイデンティティを育むのであろうか。彼らは何人なのであろうか。これがリアル国際人なのか?これは今一番興味がある事柄である。

帰国子女というのは、芸能界にもひとつのジャンルとなるほどカッコいいものと認められており、私も憧れたものだが(英語を話せて羨ましいという程度のしょうもない憧れ)二つの国にまたがって住むというのは、二つの背景を経験しないといけないということであり、しんどさももれなく二倍である。帰国子女も帰国予定子女も大変だ。彼らは、決して楽をしていない。

私は今イギリスに住んでおり、そして子供がいる。その為、彼を何人として育てるかがテーマとして存在する。私は彼を日本人として育てたい。それは、日本人のビヘイビア(思考法、習慣、行儀、うまく訳せません)と心意気が好きだからである。国際人もいいが、それは立派な日本人にした後の目標でいいかな、と思っている。


第八十五回

怪人列伝 その2

初出公開:2003/4/21 最終更新日:2003/4/21

A: 今回は「電人ザボーガー」の話です。

B: ああ、かなり強引にバイクがロボットに変形するやつな。欲しかったなー、ザボーガー。主人公、秘密刑事大門豊(山口暁)の指令で犯罪ロボットと戦うんや。

A: 主人公のヘルメットのマイク(ヘッドセットというべきか)でなんでも命令するんやんな。「ザボーガー、チェーンパンチ!」とか。

B: 拳がロケットパンチ状に飛んでいく武器やな。(飛んでいく拳は、腕とチェーンでつながれている)チェーン長っ!という。

A: ロボットに音声で指令するというのは「ジャイアントロボ」のパクリかな。責めるつもりは全然ないけど。

B: 「負けるなジャイアントロボ!」か。そんな曖昧な指示だされても、ロボは困るやろな。

A: 「そんなことわかってるけど、うまくいかんから頑張ってるんやんけ!」という心の叫びが聞こえてくるな。戦争反対のデモに通じるものがあるなぁ。

B: ああ、思い出してきた…。敵のボスの名前って「悪之宮博士」じゃなかったっけ?

A: 悪そぉー!!(笑)

B: マイクを使えば誰でもザボーガーに指令できるの?

A: いや、主人公の指令じゃないとだめ。主人公は 電極 を埋め込まれてて、彼じゃないとザボーガーを起動させられんねん。

B: 電極(笑)いやな改造されてるなー。

A: 敵はシグマ団操る悪のロボットで、そいつらはメカアニマルと呼ばれてる。何のことはない着ぐるみなんやが、物語の中盤に画期的なメカアニマルが発明されるんや。

B: どんなやつやったっけ?

A: 軽自動車の天井部分から人間の上半身(もちろん着ぐるみ装着)が突き出たメカアニマル。

B: 強そぉー!!(爆笑)

A: それが好評だったらしくて、次のメカは、 中型トラックの正面がブルドックになった メカアニマル。まあ、 機関車トーマスのデザインを先取りした というか。

B: そりゃ強そうやな。どうやって倒したの?

A: 全然覚えてないなぁ。多分、その敵ロボット登場でお腹いっぱいになったんやと思う。

B: ザボーガーの決め技ってなんやったっけ。主人公の必殺技は覚えてるんやけど…。「飛龍三段蹴り」

A: ザボーガーの口が開いてマシンガンの銃口がでてくる。「速射破壊銃」

B: 銃か。ロボット必要無ぇー。というかそんな兵器を街中に持ち出すこと自体違法やな。

A: 画期的な番組だったということで勘弁してください。